活動内容
群馬柳生会の設立記念イベント「上泉伊勢守と新陰流」
群馬柳生会は、令和6年3月から12月にかけて「上泉伊勢守と新陰流」を統一テーマとした連続4回の設立記念イベントを、前橋まちづくり協議会の協力を得て、いずれも大胡シャンテマルエホールで行いました。イベントは「新陰流をはじめ、現代まで継承されている群馬県内各流派の武術を群馬の貴重な文化遺産としてとらえ、発表の場を設けることでさらなる活動の充実と次世代への継承を図る」ことを目的としました。
以下、各回の模様をお伝えします。
第1回 上泉伊勢守と新陰流(1)
第1回は3月3日(日)、「戦国期の上州と伊勢守の在京活動」をテーマに県内2人の歴史専門家に講師を依頼しました。開演に先立ち、上泉伊勢守顕彰会の狩野浩志会長と前橋市の小川あきら市長からご挨拶を賜りました。最初に登壇していただいたのは群馬県埋蔵文化財調査事業団の飯森康広先生。「箕輪長野市の問題と上泉周辺の諸相」をテーマに、長野氏に関連する城の地形や縄張り図を説明しながら、戦国時代の上州の様相を解説。
続いて登壇した群馬県文化財保護審議会専門委員の久保田順一氏は「上泉伊勢守の在京活動」として、京に上ってからの上泉伊勢守の活動を、山科言継が書き残した『言継卿記』を基に、寺社の招きに応じて新陰流を披露したことなど、京の都での交流を生き生きと解説してくれました。特に正親町天皇から従四位下の官位をもらったことについては、非常に高く評価されていました。(宮川)
第2回 上泉伊勢守と新陰流(2)
第2回は6月22日(土)、名古屋から柳生新陰流第22世宗家、柳生耕一平厳信氏を招き「新陰流にみる流祖の思想」をテーマに講演と演武を行いました。
会場には、武道をされている方、歴史の好きな方、また新陰流に初めて接する地域の方々など、150人近い人が足を運んでくれました。新陰流の歴史や心得、技などの丁寧なおはなしで、剣術に馴染みのない方々にも、伊勢守の新陰流に込めた思いを知ることができたと思います。
新陰流は室町時代後期に、前橋で生まれた伊勢守が創始しました。そしてその兵法と心法は遠方の柳生家に受け継がれ、多くの生命に引き継ぎながら、現代も確かなものとしてここにあります。今回、伊勢守が出立してから半世紀もの時を経て、柳生家の宗家に前橋に来ていただき、伊勢守のおはなしを聞けるということは、とても貴重な会だったと思います。伊勢守生誕地の者として、これまで守っていただいたことに感謝する気持ちになりました。
講演の後半は、宗家が実際の新陰流の演武を解説しました。演武は群馬柳生会の会員(宮川、大嶋、大木、吉田)の4名で、三学円之太刀、三学円之太刀(古式)、試合勢方法、九箇之太刀、燕飛之太刀を行いました。 最後を締める「謙虚にあって日々向上に努めよ」の言葉に、あらためて身の引き締まる思いがしました。(大木)
第3回 群馬の古武道
第3回は、9月7日(土)に「群馬の古武道」と題して、5団体からの協力を得て、本会を含め以下6団体(出演順)により演武会が実施されました。
- 荒木流拳法保存会
- 気楽流柔術
- 日本光輪会合気道前橋光輪洞
- 法神流平法伝承会
- 真田忍者研究会
- 群馬柳生会
各団体は持ち時間の30分を活用し、老若男女多くの門人が日ごろ鍛錬してきた技を披露され、その内容は、太刀使いにとどまらず棒術、薙刀、鎖鎌、柔術、合気道など多種多様なものでした。また、各流派の道統や技の解説も加わり、参加者のみならず、ご来場いただいた観客も十分満足いただけたと思います。さらに、後に知ったことですが、演武会の当日、月刊「秘伝」の取材があり、記事になったことには驚きとともに主催する側として嬉しくも感じました。
現代まで継承されている各流派の武術を群馬の貴重な文化遺産としてとらえ、一堂に会し演武を披露することは、さらなる活動の充実と次世代への継承につながるものであると確認を持った大会でした。(大嶋)



第4回 上泉伊勢守と新陰流(4)
第4回は令和6年12月7日(土)に名古屋柳生会石黒峰司先生を講師に迎え、「禅の境地からみる心の兵法」と題して講演を実施しました。
石黒先生はいかにも武士のような威厳のあるたたずまいながらも時にはユーモアをまじえ、新陰流、剣道、禅の関連性について講和されました。
先生は、勝負事で相手に対した時、邪念があっては勝つことはできない、無念無想の何も考えない心の状態にある時にこそ相手に応じた働きができ勝つことができる。そして無念無想の心は厳しい稽古とともに禅により何にも動じない心を育むことで得られる。また、稽古や禅への取り組みは特別なものではなく、日常生活の一部として毎日やり続けることが大切であると講和されました。
最後に三学円の太刀の古式、下から使いの演武により、一つの動きの中にある攻防の多様性と身体の使い方について指導されました。
講演を聴いて、群馬柳生会は今後さらに積極的に稽古に取り組むとともに、無念無想の心を得るために日常生活を通じて禅に親しんでいこうと思いました。
石黒先生には、遠路はるばるおこしいただいたうえに貴重な講和をいただき心から謝意を申し上げます。(吉田)
赤城神社奉納武道大会
第33回上泉伊勢守杯・赤城神社奉納武道大会が6月5日、前橋市三夜沢町の赤城神社で開かれ、大会に先立って群馬柳生会と気楽流柔術(飯嶌文夫宗家)が奉納演武を行いました。池波正太郎の小説『剣の天地』に、この地で上泉伊勢守が修行したことが書かれていることなどにちなんで開かれています。
創建千年以上と伝えられる神社の境内は、これも樹齢千年を超える「たわら杉(高さ37㍍、幹回り6㍍)」がそびえ、荘厳な雰囲気に包まれています。神楽殿脇の広場に設けられた試合場を大勢の少年剣士が取り囲む中、上泉伊勢守に思いを馳せながら三学円之太刀、試合勢法、九箇、燕飛を奉納しました。

前橋桂萱小児童に上泉伊勢守の授業
郷土の偉人・上泉伊勢守のことを学ぼうと令和5年12月14日、前橋市桂萱小学校で地域学習の授業が行われ、群馬柳生会のメンバー4人が講演と演武を披露しました。
同校では十年ほど前から地域学習の一環として上泉伊勢守をテーマに勉強をしています。この日は午後から2時間分の授業時間を使って、上泉伊勢守の生涯や考え方を学んだあと、代表的な技を見学しました。
参加した子供の大半が上泉城址の銅像を見たことがあり、熱心に勉強していることがうかがえました。初めて袋竹刀を持った子供たちは、「軽い」「柔らかい」などと言いながら、笑顔で触ったり振り回したりしていました。

東照宮武道講座に参加して
令和5年11月28日(木)、日光東照宮武徳殿において東照宮武道講座が行われました。対象は、武道に興味のある香港や台湾の外国人や、地域の方々です。講義は宗家がパワーポイントを使って英語で行い、演武披露は柳生耕一宗家はじめ関西柳生会から紀ノ崎、群馬柳生会から宮川、大木が「三学」「相雷刀八勢法」「燕飛」を行いました。
講義の後は新陰流体験として、座礼の作法と「相雷刀八勢法」1本目の「合撃」を指導しました。初めて新陰流の袋竹刀を持つという方々でしたが、真剣な眼差しで練習をし、最後には悠々と竹刀を振り下ろしていました。
日光東照宮武徳殿は東照宮300年祭に建立されたという、朱色の映える切妻造りの武道館です。歴史と建築美が評価され、国の登録有形文化財にも登録されているそうです。このような歴史ある立派な道場に行くことができ、大きな経験と励みを得ました(大木)。

群馬柳生会として米沢合宿に参加
東京柳生会の主催で令和5年12月2日(土)3日(日)、山形県米沢市の三條かの記念館で米沢合宿が行われました。この合宿は上泉伊勢守のご子孫の上泉一治様との親睦を深めようと、前宗家の故柳生延春先生が始められたもので、交流は20年以上も続いています。これまでも随時参加してきましたが、今回は11月11日に発足した「群馬柳生会」として宮川、大木の2人が参加してきました。
初日は午後から稽古、夜は懇親会。2日目は稽古、演武、地元剣道家を対象にした新陰流体験会など多彩なメニューでした。演武は「三学」「相雷刀八勢法」「試合勢法(中段、下段、中下段)」「大転十三勢法」「小転下段変」「九箇」「燕飛」を披露しました。
終了後は同館後援会の皆さんが山を歩いて採った数々の山菜、お国自慢の芋煮、そして米沢牛ステーキのもてなしで合宿を締めくくりました。感謝

第4回流祖祭と群馬柳生会発足
令和5年11月11日(土)第四回流祖祭が上泉城址で行われ、市内外から大勢の上泉伊勢守(以下、信綱公)ファンが訪れ、展示や演武など数多くのプログラムを楽しみました。この日は15年以上も前橋で続けてきた稽古が認められ「群馬柳生会」が発足した記念すべき日になりました。
午前中は西林寺の大山住職の元、上泉一治様、秀人様、柳生耕一宗家をお迎えして信綱公の法要を行いました。茶道無径会の呈茶に続き自治会役員、顕彰会の方々、演武参加者らが信綱公の霊前に焼香をしました。この後、法要参加者は二列になって、桃木川側道から上泉城址まで行列。城址では午後から獅子舞の奉納で流祖祭が開幕。上泉秀人さんが信綱公を中心とした上泉家の来歴を披露。強風に負けないよく透る声で語りかけ、訪れた人々は「さすがは信綱公の子孫」と感動しながら聞いていました。
演武では群馬会員に上泉秀人さん、柳生宗家が加わり、「三学円之太刀(取り揚げ使い)(下から使い)」「試合勢法(相雷刀八勢法)(中段十四勢法)」「九箇」「燕飛」を使いました。また、前橋医療福祉専門学校の生徒18人も練習の成果を披露し、温かい拍手を浴びていました。
このほか、伝上泉泰綱の刀剣、前橋に伝わる新陰流の巻物展示、高橋恒厳刀匠による刀剣鍛錬の実演、前橋市民学芸員の歴史観光ガイド、袋竹刀や記念御朱印などの物販等、盛りだくさんの催しが賑やかに繰り広げられました。